去年のGarrr最終戦で痛めていた手の指が最近少しづつ傷みだしたので、これは病院にいって診てもらわないといけないと思い、1ヶ月以上たったある日重い腰を上げた。できることなら病院には行きたく無かったのだが…。
保険証を用意してさあ行こうかと思った時、「あ、そうそう、これ出しといて」と嫁さんの声が。見てみると郵便物が数枚。「しかたないな…」と思いつつそれも持って車で出かけたのだった。その時わたしはすでにどこのポストに出すか決めていた。というより、病院もそう遠く無いところにあるので、出すんだったらあそこしかないな!という丁度良い場所にポストが有るのだ。
それは信号機のある小さな交差点の角にあるポストで、以前その交差点に差し掛かった時に丁度信号が赤に変わったので、停止している時間を利用してポストに郵便物を入れたことがあるのだ。信号が赤になっている時間はポストに郵便物を入れてまた車に戻ってくるのには小走りで行けば丁度良い感じの時間なのだ。
前回の実績が有るし、もし今日も丁度良い感じで信号機が赤に変わればそのポストに入れてやろうと考えながら家を出てその交差点に近づくと、なんと今回もタイミングよく信号機が変わるではないか!「ラッキー!」しかも後ろにも前にも車は1台もいない。これで安心して郵便を出すことが出来る。私は落ちないようにシートの隙間に挟めておいた郵便物を手に取るとすばやく車を降りポストめがけて走った。そして難無く車に戻ってシートベルトをしめなおした瞬間、信号機が青に変わった。「フッ…! 決まった!」私は思わず笑みを浮かべた。
思った通りに事が運ぶと気持の良いものだ。私は気分よく病院まで車を走らせた。
まだ病院も開院したばかりの時間だし駐車場を見ても来院客もまばらなようだ。「やったね!」病院で順番待ちをするのは時間もかかるし嫌なものだ。「今日はなにごともスムーズにいくなあ~」と思いつつ車を降りようとして健康保険証を手に取ろうとすると、さっきまでそこにあったはずの保険証が見当たらない。入れた覚えは無かったが念のためにウエストバッグを探してみてもやはり入っていないし…。
次の瞬間、私は凍り付いた。 そう、なにげなく郵便物と重ねて置いてあった健康保険証を一緒にポストに投函してしまったのだ。
仕方なく一度家まで帰り、郵便局に電話で相談してみることに。。しかし郵便局の答えは「集荷は業者に依託してますからポストのキーは郵便局には無いんです。次の集荷の時間にその場で待っていて下さい。」「….やっぱり!?」想像通りの答えだった。。
3時間程後にその日2度目の集荷時間がやってきた。郵便局の人から聞いた話では「ポストに書いてある集荷時間より少々遅れることはあっても早くなることはまず無いです」とのことだったのだが念の為その集荷時間より5分程前に現場近くのスーパーの駐車場まで行き、ポストが良く見える所に車を止め車中から集荷に来るのを待つことにした。ポストまでは直線距離にして約30メートル。その日はこの冬最低と言っていいくらい寒い日でおまけに風もかなり強く吹いていて外で待つには辛い状態だったのだ。
私は車の中からそのポスト周辺をうかがいながら、「このチャンスを逃すと後が無い。見のがしてしまうと郵便局まで出向かなくてはいけなくなるし、時間もかかるだろうな…」などと考えながらドキドキしていた。なにせ敵は集荷のプロ、ポストの脇に車を止めポストの内容物をゴッソリいただいたら直ぐさま立ち去ってしまうだろう。その間30秒位の早業に違い無いからだ。
そんなことを考えながら待っている私はいつの間にか張り込み中の刑事の気分になってきた。そう、”太陽にほえろ”で言うと、意外にも腕利きスナイパー刑事「ごりおしのごりさん」の気分だ。もちろん頭の中ではすでに”太陽にほえろ”のそんな場面で流れてくる「バ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバッバッバッバア~ン」という曲が流れている。
まばたきする間もおしみながらその瞬間を待っていた。そして集荷予定時間を5分程過ぎた頃、ついに犯人に動きがあった。朱色に輝くあの車体が現場に現れたのだ。その瞬間、頭の中で流れていた曲は「パッパッパア~ン!」(犯人を見つけ、追い掛ける場面の曲)に変わった。しかし私は少しもあわてること無く、しかし俊敏にヒラリと車から飛び出すとポスト目掛けて走った!
ポストに駆け寄ると、犯人は丁度ポストからお宝を袋に移し替えている瞬間だった。「やった!現行犯だ!」私は内ポケットからすかさず「こういうものだが!」という感じで免許証を提示し身分を明かしてから状況説明をし、ついに国民健康保険証を奪い返したのだった!!
犯人は私の俊敏かつ計画的な行動に圧倒されたのか少しも抵抗することもなかった。
一仕事終えた後のコーヒーはいつにも増してうまかった…。