透明の液体

数年前のある夏の日のこと、私の友人が「知り合いからバイクをもらう事になったのでトラックで一緒に引き取りにいってくれないか?」と言う。私は快くOKして隣の街まで友人と一緒に引き取りに行くことに。

30分程走り着いたその場所は国道のすぐ側に有る一軒家。ごく普通の家なのだが、築50年は過ぎているであろう古い造りで見た目にはかなりやんでいる。家の前まで行くと中から知り合いが出てきて「あ、バイク取りに来たんでしょ。これです。」と、教えてくれたその先を見ると家の軒下にかなり錆びたホンダのレブルが有った。

なにはともあれ早速レブルを車に乗せる。長い間乗っていなかったようでタイヤの空気圧も抜けてしまって押すだけでもかなり重たい。友人と二人でなんとか車に乗せた。ロープでバイクを固定しようとしていると家の中からお母さんが出てきた。手には、長年使っているのか少し黄ばんだカップを二つ乗せたお盆を持っている。

「まあまあ、御苦労様です。のども渇いた事でしょう、これでも飲んで一服してくださいな。」といいながら。。「どうもすみません。ありがとうございます。」私達はそう言いながらお母さんが差し出したカップをそれぞれ受け取った。そのカップはコーヒー用の物で、それは端から見ただけでもコーヒーだな。と思えるようなはっきりとしたコーヒー用のカップだった。(親切にコーヒーを出してくれたんだ。)

そんなことを考えながらカップの中を覗き込んだ私達は直ぐに顔を見合わせた。二人ともビックリした顔をして。そして目で会話を始めた。「コーヒーじゃないぞこれ!」「透明じゃ」「水か?」「ソーダ水?」「いや、泡が出て無い」「じゃあなに?」「ただの水は出さんかろ?」「おまえ先に飲めや!」「え!?まじで?」そんな会話を交した後に友人が勇気を振り絞ってその疑惑の透明の液体に口を付けた。

それを横で固唾を飲んで見守る私。一口飲んだ友人がさらにビックリした表情で私に言った。「さとう水じゃ!」「???」「ほんま?」友人が二口目を飲もうとする姿(苦しんでいない姿)を確認しながら私もその透明の液体に口を付けた。たしかにそれはまぎれも無く”さとう水”だ。しかし私はそれ以上はどうしても飲む気にはなれない。

友人は2口3口と飲んでいる。それはただ単にせっかく出してくれたんだから残す訳にはいかないという良心だけがそうさせているとしか思えない光景だ。私はというと、友人と同じく、せっかく出してくれたんだから残す訳にはいかないという考えに違いは無かったのだが、砂糖を水で溶かしたような味はしているがそれがなんなのか確認する訳にもいかず、やはりその透明の液体の疑惑がぬぐいきれず、お母さんが向うを向いているすきに隣の畑にすてたのだ。

「うらぎりやがったな!」というような友人の視線を感じながら…。そして二人揃って「ごちそうさまでした!」と、満面の笑みを浮かべながらカップを返した。するとすかさずお母さんがとっても優しい口調で「もういっぱいいかが?」と聞いてきた。もちろん私達は丁重にお断りしたのだが、そんな私達の悲願を聞くまもなく「まあまあ、遠慮なさらずに…。」と言いながら家の中に入って行った。透明の液体をカップに注ぎ入れる為に。

その姿を見届けた私達は、慌てて荷造り途中のレブルをしっかりとトラックにくくりつけ、その場から逃げるように帰った事は言うまでも無い。

つづく…

最終戦

高校生の頃からモトクロスを始め、毎日頭の中はモトクロスでいっぱいだった私。

ある日の夕方、学校から帰ると父親がテレビに見入っていた。テレビでは相撲中継をしている。父親は大の相撲ファンなのだ。私も相撲は嫌いでは無い。どっちかいうと好きな方で、ドラマチックな取り組みを見た時などは思わず目頭が熱くなることも…。テレビを見なかった時でも新聞で昨日の勝敗をチェックしたりする。「そういえば、昨日新聞を見た時には14日目の勝敗が載っていたな。ってことは、今日は…。」私は父親に話し掛けた。「そういや今日は最終戦じゃね!(^^」そう言う私に父親が「なにを言よんぞ。千秋楽いうんじゃがや!」と、苦笑いながら言ったのだった。

う~ん。そういやそうだ。(^^;

おいやん語録

『おいやん語録』とは、これらの言葉を自然と使いこなせたら”おいやん”だ!

とも言える”おいやん”なった証拠、言わば”おいやん”の定義とも言えるべき言葉なのだ。

ここではあえて”おいさん”ではなく”おいやん”と親しみを込めた意味で使っている。

[言葉部門]

極端な話

これも物事を人に解りやすく説明する時においやんがよく用いる言葉だ。

「極端な話、わしが社長だったらの・・・」(ほんま極端やな~!)とか、「極端な話、千円が10枚で一万円だろ?」(そのまんまやんか!)とか、ただたんに話出すきっかけに使っている凄腕のおいやんもいたりする。。

餅屋は餅屋

私が良く聞く場面は、バイクをトラックで引き取りに言った時、大きなバイクを軽々とトラックの荷台に乗せたりなんかすると、「ほ~! やっぱり餅屋は餅屋じゃのお~!」と言われるのである。私はその度に心の中で「いや~、餅屋じゃなくてバイク屋なんですけど…。(^^;」と、つっこんでしまうのである。

それぞれのもんがある

この言葉もバイクを引き取りに言った時によく聞く言葉なのだが、トラックに乗せたバイクを固定する時にロープではなしにタイダウンベルトというワンタッチで縛れるベルトがあるのだが、それですばやく縛り付けると、「ほ~!それぞれの便利なもんがあるもんじゃのお~!」と言われる。

正直なもんじゃ!

「エンジンがかからんなったんじゃ」とか言いながらお客さまがバイクを店まで押して来てくれたりしたとき(そんな場合にかかわらずなんだけど)、お客さんの目の前で「う~ん。これはプラグが悪いようですねえ~。」とかいいながらプラグを交換した後、一発でエンジンが始動したりすると、決まって一言、「正直なもんじゃ!」

(悪かった所を治すと素直にエンジンがかかったことによる驚きや、”やっぱりねっ”というような気持を表現する言葉なのだろう。)

逆に言うたら

話をしている相手に物事を分りやすく表現しようとしてよく使われる言葉。「それって逆に言うたら○○よね。」とかってよく使われる。そんな時、”ほんまにそれって逆か?”とか、”なにも逆から言わなくても…(^^;”と、つっこみを入れたくなるのだ。なにをかくそう自分も気が付くとよく使っていたりして…。(^^;

おはようございました

この言葉も自分にはいまいち理解出来ないでいる言葉の一つだ。なぜ”おはようございます”ではなく、”おはようございました”なのだろう。きまって年輩の方がよく使うようだ。自分が独自に想像するには、『ました』と言うことでなにかひとつそこで締めくくろうとしているのだろうか?完了しました!という感じの意味を含んだ”ました”なのだろうか?

蓋を開けてみたら

これもやはりおいやんがよく使う言葉だ。

予定では○○だったのだが、蓋を開けてみたら△△だった。と。 先にあけて見とけよ!(さまーず三村調)と、突っ込みたくなる。

[行動部門]

むやみに物をたたく

なぜかおいやんは、バイクを見ながらパーツをコンコンと指の関節部分でたたくのである。それはまるでパーツの材質を検査しているかのように。時には、カウルのスクリーンやハンドル、ミラー等”そんな物たたかなくても見りゃあ解るだろう!”とつっこみたくなるのだ。そして、やはりここでもむやみやたらと意味も無くたたくなよ!(”さまーず”の三村調)と、つっこみたくなるのだ。

タオル(手拭い)を口にくわえる

建築現場や土木作業現場でよく見かける光景なのだが、おいやんはなぜかタオル(てぬぐいと言った方がいいのだろうか?)を首にかけて、その片方の端を口にくわえている。あれってなぜなのだろう?どう言う意味があるのだろう。そしてどういう効果があるのだろう?その状態でドカヘルをかぶり、バイクをライドしている人もみかけたことがある。てぬぐいを口にくわえることにどんな意味が有るのか知っている人がいたら是非教えてほしい。今私が一番気になることと言っても過言ではない。

レンタルビデオ

私もたま~にレンタルビデオを借りることが有る。

休みの前日で、しかも予定が全然無い時などだ。

ある土曜日の夜、私は子供と一緒に近くのレンタルビデオ屋さんへビデオを借りにいった。なにを借りるという訳でも無く。。目的も無くレンタルビデオ屋さんへ行くと必ず迷ってしまうのだが・・・。

そこのレンタルビデオ屋さんでは5本借りると全部で1000円というお得なサービスが有る。だから私はきまって5本借りることにしている。そのうち4本はいつも子供がアニメ物を借りるので私が借りられるのはいつも1本に限られる。そんな貴重な1本を慎重に選ぶ私なのだ。

時間をかけて慎重に見回していると、ちょっと前の話題作が目に止まった。「おっ!ラッキー!(^^) そういやこれはまだ見て無かったなー。」 映画館で上映されていた時にはかなり話題になった作品で確か観客動員数(?)もかなりなものだったやつだ。「もうこれしかない!」と心に決め5本のビデオを小脇に抱えはやる気持を抑えつつ家路を急いだ。

家に帰ってからちょっと遅い夕食を食べながら新聞のテレビ欄になにげなく目をやるとそこにはなんだか見覚えの有る映画のタイトルが!「えっ!うそっ!」あわててさっき借りてきたビデオのタイトルを確認した。「やっぱし…。」私が喜び勇んで借りてきた映画が今晩あるのだ。ショック….。

仕方なくテレビの映画を観ていてまたまたガビ~ン(死語)その映画は以前、レンタルビデオで借りてきて観たことの有る映画だったのだ。

チョコボール

子供がまだかなり小さかった頃のある日の日曜日、家族で車に乗って遊びに出かけた。ちょっと遠出する時なんかは決まってコンビニなんかでおやつを買い込む。ドライブしながらお菓子を食べるのがみんな好きなのだ。スナック菓子やジュース等を食べながらのドライブになるのだが、子供はいくら注意していてもボロボロこぼしてしまう。

その日も家に帰ってから車の中の片付けをしているとやはりいっぱいこぼしていた。後部座席付近に散乱しているスナック菓子の破片を拾い集めていると座席の上に綺麗な状態のチョコボールを発見!「ラッキー!」すかさず拾って口に入れようとしてふと思いとどまった。「ん?まてよ?今日はチョコボールなんか買わなかったぞ? 今日のじゃないのか? いや、最近チョコボールを買った記憶も無い。」ちょっと怪しいなと思って念のために匂いを嗅いでみた。「うっ! これは!?」それはまさしく”う○こ”の臭いではないか!

私はあやうく生まれて初めて”う○こ”食すところだったのだ。

その後、家内に聞いてみても子供はおもらしなどしていなかったと言うし、いまだに謎につつまれた事件なのだ。

張り込み

去年のGarrr最終戦で痛めていた手の指が最近少しづつ傷みだしたので、これは病院にいって診てもらわないといけないと思い、1ヶ月以上たったある日重い腰を上げた。できることなら病院には行きたく無かったのだが…。

保険証を用意してさあ行こうかと思った時、「あ、そうそう、これ出しといて」と嫁さんの声が。見てみると郵便物が数枚。「しかたないな…」と思いつつそれも持って車で出かけたのだった。その時わたしはすでにどこのポストに出すか決めていた。というより、病院もそう遠く無いところにあるので、出すんだったらあそこしかないな!という丁度良い場所にポストが有るのだ。

それは信号機のある小さな交差点の角にあるポストで、以前その交差点に差し掛かった時に丁度信号が赤に変わったので、停止している時間を利用してポストに郵便物を入れたことがあるのだ。信号が赤になっている時間はポストに郵便物を入れてまた車に戻ってくるのには小走りで行けば丁度良い感じの時間なのだ。

前回の実績が有るし、もし今日も丁度良い感じで信号機が赤に変わればそのポストに入れてやろうと考えながら家を出てその交差点に近づくと、なんと今回もタイミングよく信号機が変わるではないか!「ラッキー!」しかも後ろにも前にも車は1台もいない。これで安心して郵便を出すことが出来る。私は落ちないようにシートの隙間に挟めておいた郵便物を手に取るとすばやく車を降りポストめがけて走った。そして難無く車に戻ってシートベルトをしめなおした瞬間、信号機が青に変わった。「フッ…! 決まった!」私は思わず笑みを浮かべた。

思った通りに事が運ぶと気持の良いものだ。私は気分よく病院まで車を走らせた。

まだ病院も開院したばかりの時間だし駐車場を見ても来院客もまばらなようだ。「やったね!」病院で順番待ちをするのは時間もかかるし嫌なものだ。「今日はなにごともスムーズにいくなあ~」と思いつつ車を降りようとして健康保険証を手に取ろうとすると、さっきまでそこにあったはずの保険証が見当たらない。入れた覚えは無かったが念のためにウエストバッグを探してみてもやはり入っていないし…。

次の瞬間、私は凍り付いた。 そう、なにげなく郵便物と重ねて置いてあった健康保険証を一緒にポストに投函してしまったのだ。

仕方なく一度家まで帰り、郵便局に電話で相談してみることに。。しかし郵便局の答えは「集荷は業者に依託してますからポストのキーは郵便局には無いんです。次の集荷の時間にその場で待っていて下さい。」「….やっぱり!?」想像通りの答えだった。。

3時間程後にその日2度目の集荷時間がやってきた。郵便局の人から聞いた話では「ポストに書いてある集荷時間より少々遅れることはあっても早くなることはまず無いです」とのことだったのだが念の為その集荷時間より5分程前に現場近くのスーパーの駐車場まで行き、ポストが良く見える所に車を止め車中から集荷に来るのを待つことにした。ポストまでは直線距離にして約30メートル。その日はこの冬最低と言っていいくらい寒い日でおまけに風もかなり強く吹いていて外で待つには辛い状態だったのだ。

私は車の中からそのポスト周辺をうかがいながら、「このチャンスを逃すと後が無い。見のがしてしまうと郵便局まで出向かなくてはいけなくなるし、時間もかかるだろうな…」などと考えながらドキドキしていた。なにせ敵は集荷のプロ、ポストの脇に車を止めポストの内容物をゴッソリいただいたら直ぐさま立ち去ってしまうだろう。その間30秒位の早業に違い無いからだ。

そんなことを考えながら待っている私はいつの間にか張り込み中の刑事の気分になってきた。そう、”太陽にほえろ”で言うと、意外にも腕利きスナイパー刑事「ごりおしのごりさん」の気分だ。もちろん頭の中ではすでに”太陽にほえろ”のそんな場面で流れてくる「バ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバ~ンバッバッバッバア~ン」という曲が流れている。

まばたきする間もおしみながらその瞬間を待っていた。そして集荷予定時間を5分程過ぎた頃、ついに犯人に動きがあった。朱色に輝くあの車体が現場に現れたのだ。その瞬間、頭の中で流れていた曲は「パッパッパア~ン!」(犯人を見つけ、追い掛ける場面の曲)に変わった。しかし私は少しもあわてること無く、しかし俊敏にヒラリと車から飛び出すとポスト目掛けて走った!

ポストに駆け寄ると、犯人は丁度ポストからお宝を袋に移し替えている瞬間だった。「やった!現行犯だ!」私は内ポケットからすかさず「こういうものだが!」という感じで免許証を提示し身分を明かしてから状況説明をし、ついに国民健康保険証を奪い返したのだった!!

犯人は私の俊敏かつ計画的な行動に圧倒されたのか少しも抵抗することもなかった。

一仕事終えた後のコーヒーはいつにも増してうまかった…。

カチカチ山

先日のお花見の帰り道での出来事だ。

大勢で公園でバーベキューともなるとかなりな荷物になる。テーブルや椅子、もちろんバーベキューコンロや食材なんかもアウトラインで用意して持って行くのだ。その多くの荷物をわたしは車の後ろに引いたトレーラーに積んで持って行っていた。帰りもおなじくトレーラーに荷物を積んで持ってかえるのだがゴミが増える分、帰りの荷物の方が多くなる。しかもみんなお花見で疲れているので片付けも少々いいがけんになる…。

なんとかトレーラーに荷物を全て積み込み、帰途についた。少し心配だったのは、荷物がトレーラーから落ちないか?ということ。特にゴミはわりと軽いので走行風や震動で落ちる可能性が高い。家までは約3~4kmなのでゆっくり帰れば大丈夫だろう。

国道に出て後ろに連なる車を気にしながら、しかしスピードを普通に出して走れば路面の継ぎ目などのショックで荷物が落ちるだろうと思いゆっくりと走行する。1キロ程走っただろうか、広い交差点で信号が赤に変わった。ゆっくりと車をとめる。すると、右折専用レーンに入ってきた車が私の車の真横に並んだかと思うと、その車の運転手と横に乗っている人が2人とも私の方を向かって目をひんむいてなにか叫んでいるのだ。

窓を閉めていた私は、「あ~、やっぱしゴミかなんか落としてしまったか…」と思いつつ、なにを叫んでいるのだろう?と車の窓を開けた。そして、その人達が叫ぶ言葉を聞いて自分の耳を疑った。

「燃えてますよ~!!」

私は急いで車を降り、トレーラーへ走った。「なるほど燃えている….」

私はここであまり慌てたそぶりをすると信号待ちで並んでいる車が沢山いるのではずかしいなと思い、わざと落ち着いた振りをしてその燃えている荷物だけをとりあえず路肩へと下ろした。その時手に若干のやけどをしてしまったが、「あっちい~!!」とかとオーバーアクションするとこれもまた恥ずかしいのでなにもなかったかのように装った。

そんな私を見かねてか、後ろに止まっていた車の助手席にいたおばさんが降りてきて燃え盛る荷物を一つ下ろしてくれたのだ。「あのときのおばさん、ありがとう!(^^;」

そして、燃えていた荷物は飲み残しのウーロン茶で消火した。

肝心の火災の原因だが、肉が入っていた発泡スチロールの箱に水もかけずに燃え残った炭を入れたことだった。。

「そりゃ、燃えるわな…」

妙になっとくしたのだった。

パイウーロン

もうずいぶん前の話になるのだが、アウトラインで恒例のバーベキューをした時の事。みんなモリモリ肉を食べ、ビールもグイグイすすむ中、約一名ほとんどアルコール類が飲めないshio氏がいた。 そんなshio氏は独りウーロン茶をグイグイやっている。 しばらくして、他の連中もウーロン茶に集中。十分買っていたはずのウーロン茶は瞬く間に無くなった。他の連中はビールでもOKなのだが、ウーロン茶しか飲めないshio氏にとっては死活問題。「ウーロン茶がない~!」と暴れ出した。

しかたなく家の冷蔵庫をのぞいてみると、そこにはペットボトルに半分程残ったウーロン茶があった。「あったあった!ウーロン茶」と、shio氏にそれを手渡すと「これ俺の~!」とみんなに宣言して独り占めしてうれしそうに飲み始めた。

そんなshio氏がしばらくして、「このウーロン茶の中に浮いとるつぶつぶはなんだろ?」というのでみてみると、なるほどBB弾くらいのものからビー玉くらいの大きさのものまで無数の玉(マリモみたいな感じ)が浮遊しているのだ。なんだろう?と思いながらボトルのラベルをよく見てみると”パイウーロン”と書いてある。それを見つけた私は「これ、パイウーロンっていうお茶じゃけんこの丸い物体は”パイ”じゃない?」と言うと、shio氏は「あっ、なるほどこれがパイかあ~。」と納得した様子でまたグイグイとパイウーロンを飲み出した。

その頃は丁度ジュースなんかでも”つぶつぶオレンジ”とか”りんごの果肉入りジュース”とかのつぶつぶシリーズ物が流行っていたときなのでなんの疑いもしなかったのだ。

そんな楽しいアウトライン恒例のバーベキューは深夜まで続いたのだった。

そんなことがあった日から2~3日、ちょくちょく顔を見せるshio氏の姿を見かけなくなった。「最近、どうしてるんだろう? 仕事が忙しいのかな?」と気にかけはじめたそんなある日、久しぶりにshio氏がアウトラインに現れた。こころなしか痩せこけた顔をして・・・。「どったの? 最近みかけんかったけど…。」との私の問いに、「あのあと腹こわして下痢はするわ高熱にうなされるわで大変だったんぞ~! 2日も会社休んだわや!」と大変不機嫌な様子。 どうやら”パイウーロン”に入っていたつぶつぶは”パイ”ではなくただの胞子のかたまり。解りやすくいうと”カビ”だったようなのだ。

そういえば正味期限はとっくに切れていたような気がする…。

それにしても、完璧に腐ったウーロン茶を「これがパイかぁ~。」と納得して飲むshio氏っていったい・・・。(^^; 

マジックリン

ある晩、寝る前にお茶でも一杯飲もうと思い台所に行ったとき、前々から気になっていた換気扇の油汚れが妙に気になった。「あ~、このギトギトした油汚れをすっきりしたいなあ~。」と思いながら辺りを何気なく見渡すと、有るではないか”マジックリン”が! その台所掃除グッズの王様マジックリンを見つけたことが悲劇の始まりになろうとは…。

渡しに船とはこのことだろうか? 私は迷うこと無くマジックリンを手に取るとテキパキと換気扇の掃除をはじめたのだ。それは、マジックリンでどんな頑固な油汚れも簡単に落とせる爽快感を得る為と、嫁さんの知らない間に換気扇を綺麗にしておき、明日の朝一番に台所に立つであろう嫁さんをビックリさせてやろうという魂胆からだ。

おそらく嫁さんは朝早く起きてきて、いきなり台所に立ち、「え~!うっそお~!きれ~イ!!」と、感動の嵐に違い無い。そればかりか、「もお~、主人ったら~!ニクイことするんだからあ~・・・。今晩のおかずはサービスしちゃうぞっ!」なんてことにもなりかねない。(^^;

そんなことを考えながら黙々と換気扇を掃除する私なのだった。

しかし、半年以上溜めた油汚れは”キング”マジックリンをもってしてもそう簡単には落ちてはくれなかった。私の想像では、マジックリンをシュッシュッシュ….水道の水でジャア~….う~んピッカピカ!(^^)v という予定だったのだが…。

とうとう亀の子タワシも使ってゴシゴシやるはめになってしまった。30分以上ゴシゴシやっただろうか?ついでに換気扇の回りやコンロ回りのタイルなんかも綺麗にしてやっと出来上がった。

そして最後はお掃除道具の後片付け。やはりやりっぱなしではいけない。掃除をしたという形跡を消しておかないと嫁さんの感動も半減してしまうだろう。 しかし、亀の子タワシについたギトギトした油汚れはどうにもこうにもなかなか綺麗になってくれない。しょうがなく亀の子タワシだけはそのまま流し台の角に置いて寝ることにした。 明日の朝、嫁さんが奇声をあげて喜ぶ様を想像しながら…。

しかし、なかなか寝付けない。嫁さんが驚く様を想像するとワクワクしてしまって眠れないのだ。その晩は結局ずっと浅い眠りで夜明けを迎えることとなった。そして、嫁さんが起きてくる時間が来た。私は耳を澄ませてその瞬間に神経をとぎすませる…。

階段を静かに降りてくる足音….そして台所へ….しばらく無音・・・。 そしていつものように食器を洗う音。。。あれっ?気が付いて無いのか??  いや、まあ、まだ子供達も寝ていることだし、奇声を上げたくても上げられないのに違い無い。そう考え、はやる気持をおさえつつ起床時間まで、またしばしの眠りについたのだった。

今度は子供達が起きてくる音で私は目をさました。そして、子供達がみんな起きてきた頃、やっと嫁さんの声が聞こえてきた。

「誰っ! タワシ使ったのっ!!」

お、怒っている!????

たまりかねて私も起きていった。

そして、タワシを使ったのは自分だと告白。しかし、嫁さんの反応は「なんで?」って感じなのだ。じれったくなって、私は「なんか気付かん?」と聞いてみても「なにが??」という。ここまでくると半分言いにくくなってきたが、勇気をふりしぼって全てを告白した。

すると、やっと「ああ~! そういやあ~!」

おいおい、”そういや”かよ!(^^;

私の昨晩の30分以上にもわたる換気扇との格闘はなんだったんだろう?そして、嫁さんのリアクションを期待するあまり眠れなかった自分はなんだったんだろう?

まあいいか、いちおう感謝してくれたことだし…。(^^;

その日は一日中ねむたかった。。

ダミー

私が小学生だった時の話。

学校の授業で図画工作の時間に車のおもちゃを造ったことがあった。
車のおもちゃといっても、今みたいに学校で用意してくれるプラスチックのスケルトンボディにスチール製の車軸にプラスチック製のタイヤを使った、まるで市販のプラモデルのおもちゃを説明書どおりに組み立てるだけるような物ではない。私の頃の図画工作の時間に造る物といえば、どこの家庭にでもある廃材を利用したものばかりだった。

その時造ったマシンももちろん完璧なハンドメイドだった。
石鹸の空き箱で出来たボディ、”竹ひご”の車軸、厚紙を丸く切り抜いたタイヤ、動力はもちろんマブチモーター。
エネルギー源は単三電池、モーターと車輪をつなぐ駆動系はおなじみの輪ゴムといった具合だ。

図画工作の時間に造ったそのおもちゃ、家に持って帰ってもいい時期になって大切に持って帰った。
今頃の子供でも案外親の買い与えるおもちゃは最初は良く遊ぶのだがそのうちすぐに飽きて遊ばなくなってしまうが、自分で適当に造った手づくりのおもちゃは”しょうもない”物でもなぜかいつまでも飽きもせず遊ぶものだ。
私も例外では無かった。
学校で造ったその車のおもちゃを持ち帰ってから、耐久性を上げる為の改良やカッコ良くするために色を塗ったりしてさらにお気に入りの状態に仕上げた。片手に軽く載るくらいの大きさ、紙やゴムで出来ているけれど割としゃんとした剛性、走らせても大して速くは無いけれど逆にゆっくりとした動きに力強さを感じさせる。
もちろん市販のプラモデルと比べると雲泥の差。比べること自体おかしいことだが、子供の私にとっては買ったプラモデルよりもお気に入りのおもちゃとなった。

それからというもの家に居る時はその車を肌身離さなかった。ご飯を食べる時も、テレビを見る時も、トイレに入る時も、そして寝るときはもちろん枕元に置いて・・・。

そんな私を見ていて6つ年上の兄貴の悪戯心に火がついた。兄貴は基本的には優しい兄貴なのだが、なにかにつけて私の嫌がることをしつこくしてきては私を泣かせることが多々あったのだ。

兄貴の今回の悪戯作戦はこうだった。
まず、私が肌身離さず大切にしている”おもちゃ”のダミーを造る。

私がおもちゃから目を離したすきにダミーとすり替える。

私の目の前でダミーのおもちゃを誤って踏みつける。

私がショックのあまり泣き叫ぶ様をみてよろこぶ。

「ダミーでした~!」と種明かしをして更に楽しむ・・・。

といった具合だ。

そんなとんでもない計画をたてた兄は早速ダミーの製作に取り掛かったそうだ。
しかしそのダミーは私の目の前に意外な形で姿を現すことになった。
いつものようにお気に入りのおもちゃで遊んでいたときにそのダミーを手にした兄貴が目の前に現れたのだ。自分の手にある大事なものが兄貴の手にもある!? 世界に1つしか無いはずのおもちゃがもう1つあることに私はビックリした。そしてそれをよく見せてもらってやっとダミーだということに気がついた。

しかし、なぜこんなダミーを作ったのかワケが解らない私が戸惑いながら兄貴に聞くと悪戯作戦の一部始終を話してくれた。それを聞いた私は腹が立つやら飽きれるやら・・・。まったくなんとも暇なやつだ・・・。

しかし、なぜ悪戯ビックリ作戦を完結させなかったのか??
ワケを聞いて笑ってしまった。

ビックリ作戦を成功させるには当然ダミーの仕上がりが重要と考えた兄貴はおもちゃの細部にまでこだわって造り上げた。あまりにも完璧に造った為に作業時間も長時間かかり、それを壊してしまうにはもったいなくなってしまったそうだ。情がわいたというやつか・・・。

結局、そのあまりにも良く出来たダミーも私のお宝となり、それからというものダミーと本物を肌身離さず遊ぶ私なのだった。