長財布

先日、某大型複合型ショッピングセンターに妻と二人で遊びに行った時の事。

特に目的も無くウロウロしていると、ワゴンに山盛りになった財布が目に入った。
安売りしているようで、そういえば新春にはよく見かける光景だ。
自分の財布は少し痛んできているし、折り畳むタイプの財布なので、お札を折らないで入れられる長財布に憧れがあった私は気が付くとワゴンに山積みにされた財布を品定めしていた。
しかし、なんかピンと来る財布が無い。「なんか女っぽい物ばかりの様な気が・・・」顔を上げるとワゴンの看板には「婦人用」と書かれてある。
横にある別のワゴンをみても「婦人用」・・・。

紳士用は無いのか~?と思い周りを見渡すと、あるには有るが特別安売りしている風じゃない普通の陳列棚に紳士用は並んでいた。
そこには特に高価なわけでもないが、特別安くもない財布が並べられている。
今日は財布を買いに来た訳でもなかったが、その中に自分の気に入る財布があるかどうか気になった私は妻と二人で片っ端から見てみた。

これなんかどう?
妻が一つの財布を手にとって見せる。
え~~!? それ・・・って蛇革風の・・・?
妻が手にとって私に見せたそれは、蛇革風のデザインので、自分が先に見つけていたら絶対手にも取らないだろうな。と思うような派手派手しい長財布だった。
でも、機能的にどうなんだろうと気になった私は一応手にとって見てみた。

開いて中を確認してみると、中は黄色というよりは黄金色にかがやく布地でちょっとセンスが・・・。
でも、カード収納場所などは多く意外に使い勝手はよさそうだ。
他の財布は地味でスマートだが、その分使い勝手がイマイチそうなものばかり。
見た目は派手で一見して「こりゃないわ」と思ったものの、機能的な面で気に入った私はとりあえずその財布を手にとったまま、他にもこれに勝る物は無いか全て見まくった。

しかし、その蛇革風の財布に勝る物は他に無かった。
「う~~ん・・・。 この中でいったらこれが一番良いくらいかぁ~・・・。」
どうしよ・・・。

かなり迷った。
さりげなく手に持って、妻に見てもらい、「似合う?」
「似合う似合う!」
「まじでぇ~!」
「まじで」

今度は、さりげなくジーンズのお尻のポケットに入れてみて、妻に見てもらい、「似合う?」
「似合う似合う」
「ほんとにぃ~!」
「ほんとにっ!」
しつこく聞く私に、妻も少々呆れてきているようだ。

「う~~ん・・・・、ほんと、どうしよ」
そこで私は、「やっぱりこんなに悩むくらいだったらやめとこか~」
「ほうじゃね」と簡単にやめる方に賛成する妻。
いったんその財布を陳列棚に戻し、その場を離れようとしたがやっぱり気になってしまって。「そう高いもんでもないし、やっぱり買おかあ?」
という私に、「えんじゃない」と、また簡単に賛成する妻。
結局、妻にとってはあまり興味が無いようだ。

ここで会ったのもなにかの縁。
そう決心して結局その蛇革風の財布を買うことにした。

レジでお金を払ってから、直ぐまた袋から財布を出し今一度中を見ていると、一枚のカードが。
「なんだ?」と思ってみてみるとローマ字で名前が書いてある。
「ん~? なんとか・・・ヤマモト?」
どうやらその財布のデザイナーの名前の入ったカードのようだ。
歩きながら妻に「一応これどっかのデザイナーがデザインした財布みたい! よかった~。 そうということが解ったらなんかちょっと気に入って来たわ!」
「ふ~ん。よかったねぇ~。」
不思議なもので、さっきまで派手な蛇革デザインが少し恥ずかしいくらいに思っていたのに、名も無いとはいえデザイナーがデザインした財布だということが解るとその財布が少し気に入ってきた。

そして、そのショッピングセンターの休憩所にある落ち着ける椅子を見つけ座ると、直ぐに古い財布から新しい財布への中身の移動を始めた私は、まずさっきのカードを抜き取り、捨てようとして今一度デザイナーの名前をじっくり読んだ。
「カ・・・ン・・・サ・・・イ  ヤ・マ・モ・ト」
「カンサイ ヤマモト?」
「山本寛斎!?」

「おー! これ、山本寛斎のデザインだって~! やったぁ~! めっちゃかっこえ~ヤン!!」

さっきまで「イマイチ」とか文句ばかり言っていた私の変貌ぶりを見て、横で妻は呆れていた。

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